もう三日も経ったの？家に引きこもっているだけでテスト勉強なんかろくに進まなかったよ。
授業中
私は小学校の時はまわりの子よりも多少勉強ができる子供だったから、授業中は暇していることが多かった。先生にもうできたよ、もう飽きたよのアピールをするために鉛筆やら鉛筆キャップやら消しゴムで机の上にタワーを建造して、トランプタワーでやるみたいにバランスを取って遊んでいた。やがて、よく出来すぎるがゆえに暇している生徒に特になんの措置もしない小学校教師というものに心底失望してからは、あからさまな態度をやめ、机の下で本を読んだり、ノートに超長い迷路を書いたり、イラストを描いたりしていた。ペン回しはそのころ練習して何種類かマスターした。
今思い返しても、そのころと私はやることがほぼ変わっていない。大学生になって、「優等生のできる子」から、「怠け者のできない子」になっても、ノートの隅に落書きはあるし、つまらない授業では小説を読んでいる。暇なときにイラストも描く。
少し変わったところがあるとするなら、小説を読むだけじゃなくて書くようになったことだろうか。授業中に小説の内容をぼんやり考えていることが多くなった。何か出来事が起きて感情が高まると、「あ、これは小説にしなくちゃ」という意識が働く。「勉強に集中できないなぁ。あ、この感情、小説にしよ」という具合だ。最近は、勉学よりも、勉学をすることによって動く私の感情の方に注目しながら生きているから、少しまともではないのかもしれない。空想の中に生きるぼんやりとした人間になってやしないかと自分のことながら少し心配ではある。
発言
ハーマイオニーは元気に手を挙げて授業中発言するけど、私は発言というものが得意ではなかった。てか、今も得意じゃない。
なんか恥ずかしい気がする。こういうとこが日本人の他人を気にしすぎる悪い所なのかもしれないけど、日本人として日本人に囲まれて生きるんだったらそういう価値観が身についてもしょうがないだろう。間違えたら嫌だし、間違わなくても、私にわかるくらいの問題なら黙ってたらどうせ他の人が言うだろうし。
先生にあてられてやっと答える、というシチュエーションでも、まだ緊張する。ちょっと手の先が冷たくなってひどいときは震える。まじでかっこ悪いけどそうなる。本当にしょうもない問題で、わからなかったら「わかりません」と言って先生とコミュニケーションをはかったらいいんだろうけど、先生という存在がそもそも得意じゃない。
思春期の、まわりの大人全部がクソに見える時期ってあるじゃん。その時にそれをうまく克服できなかったから大人との話し方とかがわからなくて、今もそれをひきずってなんとなく避けるという距離感になっている。いい大人や先生もいることはわかってるけど、気に入られるにはどんなふうに近づけばいいのかわからない。
生徒と先生はどこまでも事務的な付き合いだけで許される。入学から卒業まで一度も目を合わせなくても、口を利かなくても時が来れば別れ、他人になる。
殺せんせーみたいな先生に出会えてたらちょっとは違ったのかな？
勇者
ああ、そうだ。『勇者』という短編を書いた。発言をしようか迷って、迷っているうちに時間が経って、やっと発言を決意して声を出そうとしたら他人と被って、やきもきしてる時間のわりに何も言えずに終わるっていう話。割と実話ベースではある。発言をしたら勇者になれるんだけど、他人に勇者の座を奪われ、もう少し勇気を出して勇者になっていれば、とほんのりした後悔をする。
迷っているうちに時間が過ぎて、やっと決めたころには手遅れで、悩んだ時間が無駄になる、ということは私の中でよくある。
①先生が来なくて授業が遅れてるとき、トイレに行きたくなってきたんだけど、今行ったら先生が教室に来てしまうだろうか、いや、もう10分遅れてるし、それならもう10分来なくてもおかしくない。いや、10分という時間は遅刻に気付くのに十分な時間だから、今まさに教室に向かって廊下を歩いているのかも？
②駅を歩いてたら数十メートル先に目の悪い人が歩いている。点字ブロックから若干それて道を見失いつつある。少し小走りに行って誘導すればポールにぶつからないだろう。でも、もっと近くを歩いてる人が特に助けるそぶりもないし、それているのは気のせいで、実際あの人はちゃんと歩けているのかもしれない。というか、近くの人が何かあったら助けるだろうし、私がわざわざ走るのは不自然か？
③電車は30分に一本の田舎で、外は雪。時計を見ると時間は微妙で、走ればワンチャン乗れるかもしれない。外は暗くなってきて、早く帰るに越したことはない。早い電車なら席も空いているだろう。でも、もし乗り遅れたら寒い中30分待ち、混んだ電車に乗ることになり、それなら少なくとも学校のストーブで30分暖まっていた方がむしろ幸せで賢いんじゃないか。
あなたはどう思う？すぐ行動できる？
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