車で駅まで送り迎えしてもらっていたんだけど、通学路に丹田がヒュンってなるとこがあって、割とそこを通る時を楽しみにしていた。
我らがパラダイス
林真理子
ボケ始めた老人を介護する50代のおばちゃんたちが、介護や、老人を巡っての家族のいざこざに疲れて限界を迎え、高級老人ホームのセレブ老人と自らの家族をすり替えることを思いつく。完全に犯罪だが、みんな幸せになれる。本来なら高級老人ホームで一生を終えるはずだった金持ちボケ老人のことを考えると倫理的にちょっと考えさせられるけど、お金が無くて家族をいい施設に入れられない人たちの辛さもわかる。
介護の辛さや、老人に対する家族の冷たさ、格差を知って、なんか辛くなった。
最後には結局すり替えがバレるのだが、そこでおばちゃんたちと老人は、老人ホームにバリケードを作って警察から立てこもる。まじでシュールでおもろい。
ヴィクトリアンホテル
下村敦史
女優、貧乏男、テレビ業界の成金、弁当屋の夫婦が、歴史あるホテルの閉館セレモニーのためにホテルに泊まりに来た。
と、思って読んでいたら、どうやら話の時系列はバラバラで、実は過去の話をしていたということがわかる。ヒントがいろいろと散りばめられていて、節々に感じていた違和感は最後にわかると、なるほどと思った。
人にかける優しさについてがテーマで、以前かけた優しさの、たった1回の関係が、その後のその人の人生を変え、また会った時に優しい気持ちになれる。
三日間の幸福
三秋縋
「ひょっとすると、あの一見小さな好意は、俺の人生においては最大のものだったんじゃないか――それに気づいたのは、彼女がいなくなった、ずっと後だった」
「いつだって俺は、救いがたく間の悪い人間だったということだ」
「以後、あなたを好きになろうとしてくれる人は、二度と現れません。あなたが他人のことを、自分の寂しさを埋める道具くらいにしか見ていないということは、案外見抜かれてしまうものなんですよ」
「俺は、ナルセという人物を気に入っていたのではなくて、自分のことを肯定してくれる彼を通して、俺自身を愛していたというだけなのかもしれない」
「いくら死期が近いからといって、世界が急に優しくなるなどということはないのだ」
「私は、彼に、不幸になってもらいたかったんだと思います。彼には、たっぷり悲しんでもらって、絶望してもらって、殻に閉じこもってもらって、絶対に帰らない私の帰りを待ってもらって、それでもなんとか、辛うじて息をしていて欲しかったんです」
「周りには滑稽に見えるかもしれないけど、あなたが左肩を濡らしていることには、とっても温かい意味がある、ってことです。そういうのが好きなんです」
「あなた、永遠になりたくないの?」
「俺がいない世界で俺が永遠になっても、何にも嬉しくありませんよ」
不幸なことがアイデンティティな馬鹿は、もうどうしようもなく手遅れで、生のしがらみから離れたところにいって初めて世界を愛せるようになる。愛せるようになった時にはもう遅くて、なんにもできないけれど、その人の目に映る世界は本当に美しい。
以前読んだことのある小説だったけど、書店で見かけてもう一度読みたくなったから買った。あとがきでも書かれていたけど、命の大切さや愛の力なんかじゃなく、単純に「美しさ」を描こうとした小説の試みだからこんなに心を打たれるのかもしれない。
推し、燃ゆ
宇佐美りん
ダイスケリチャードさんが表紙イラストを描いていたのでちょっと気になって読んだ。CDで言う、ジャケ買いに近い。
推しが人生の目的になり、背骨となった主人公の高校生~大学生は、生活の全てが推し中心に回っている。勉強やバイトも上手く出来なくて生きづらいが、推しがいるから生きられる。
最近、推しという言葉がどんどんライトな意味になってきてると思った。彼女の推しへの情熱は、愛とはちょっと違うと思った。依存?こういう感情って、日本の推し活という文化が生み出した固有のものなのかな。
最後、推しが引退し、彼女は背骨を失う。こうやって推しに依存しないと生きられない社会の寄る辺なさを、周りが上手くサポートできればよかったのかもしれないと思った。
漫画
あさこ
よしだもろへ
広告に出てきたマンガ。海辺の民宿に住む小学生の男の子の前に、大学生くらいの大人なお姉さんがやってくる。当時はただドキドキしてただけの少年だったが、大人になってからあさこと名乗っていた彼女について調べ始める。子供の目から見てもミステリアスで何か辛い過去を持っていそうだと感じられるけど、それも魅力のひとつになって忘れられない。お姉さんの正体に迫るサスペンスが面白い。
夏の匂いがして、最後はちょっと切なくて良かった。
まとめ
小説4冊と漫画1本。
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